ワインのデキャンタ、デキャンタージュとは何か、またその効果についてご存知でしょうか。
今回はワインのデキャンタとは何か、そしてデキャンタージュとその効果について説明していきたいと思います。
デキャンタとは?
「デキャンタ」とはワインを入れるガラス製の容器のことで、最近では「カラフェ」と呼ばれることも多いかもしれません。
ワインによって、一度デキャンタに移し替えることで、より美味しく味わえるものもあります。
このデキャンタにワインを移し替える作業のことを、「デキャンタージュ」と言い、ワインの話をする時にはよく出てくる言葉です。
デキャンタージュの効果
デキャンタージュによって、ワインに以下の効果が期待できます。
- 味わいをまろやかにする
- 香りを引き出す
- ワインの中の澱(おり)を除く
味わいをまろやかにする
デキャンタージュによって、赤ワインの味わいをまろやかにすることができます。
デキャンタージュで赤ワインを酸素と接触させることで赤ワインが化学変化を起こし、ワインに含まれる酸とポリフェノールの量が減少するためで、
結果的にワインの渋味や酸味をまろやかに感じます。
香りを開かせる
デキャンタージュによって、香りが閉じているワインの香りを開かせることができます。
ワインの「香りが閉じている」とは、ワインに含まれるエステルなどの香気成分が揮発していないため香りが弱く感じることで、
例えばボルドーの上級赤ワインのような、タンニンやポリフェノールが豊富に含まれるワインを開封したばかりの時に、香りが閉じたと感じることが多いです。
この香りが閉じたワインの「香りを開かせる」、つまりワインの香気成分を揮発させるために、デキャンタージュを行うことでワイン本来の香りが戻ります。
ワインの澱(おり)を除く
デキャンタージュによって、ワインの澱(おり)を取り除いて、ワインを美味しく飲むこともできます。
「澱(おり)」とは、ワインに含まれるタンニンやポリフェノール、タンパク質などが熟成によって結合したもので、
ヴィンテージの古い赤ワインなどで、浮遊物や異物のように浮いたり、ボトルの底に沈んで見えます。
澱は飲んでも健康に問題ありませんが、ざらつきと苦味があるので、ワインを美味しく飲みたい時はデキャンタージュによって澱は取り除かれます。
デキャンタージュに向くワインと向かないワインがある
デキャンタージュすることでワインを意図的に酸化させる、澱を取り除くという効果がありますが、
全てのワインがデキャンタージュに適しているわけではなく、ワインによってはデキャンタージュが逆効果になることもあります。
以下で、デキャンタージュに向くワインと向かないワインを、整理します。
デキャンタージュに向くワイン
フルボディの赤ワイン
濃厚で渋味が豊かなフルボディの赤ワインは、デキャンタージュによって香りと味わいをより引き立たせることができます。
ワインのボディについて、またフルボディの赤ワインについて詳しく知りたい方は、以下の記事が参考になると思います。
ワインのボディとは?それぞれの分類と特徴、ボディを決める要素を解説
フルボディの赤ワインとは?飲む前の見分け方やより味わいを堪能する方法を詳しく紹介
香りが閉じている印象のワイン
ヴィンテージが若い高級ワインを開けた時に「なんか香りが立ち上がってこない」と感じるようなら、そのワインの香りが閉じている可能性が高いです。
そのようなワインは、デカンタージュによってワインを酸素に接触させることで、香りが開いて美味しく飲めます。
デキャンタージュするワインは基本的に赤ワインがほとんどですが、香りが閉じている高級ワインの場合は、白ワインでもデキャンタージュすることがあります。
熟成したヴィンテージの古い赤ワイン
長期熟成させた赤ワインには澱があることが多いので、デキャンタージュによって澱とワインの上澄みを分けることがあります。
澱を取り除くためには、数日間ワインのボトルを立てて澱を沈殿させてから、ワインの上澄みだけをデキャンタに移し替えます。
デキャンタージュに向かないワイン
スパークリングワイン
スパークリングワインは、シュワっとした清涼感や泡立ちを楽しむため、デキャンタージュは行いません。
デキャンタージュを行うことで、ワインに溶け込んだ炭酸ガス=二酸化炭素が抜けてしまい、逆効果になるからです。
ヴィンテージの若い白ワイン
ヴィンテージが若い白ワインは、一般的にはデキャンタージュは行いません。
若い白ワインは、デキャンタージュによって揮発性の香気成分が飛んで香りが抜けてしまうこと、適温より温度が上がることで味わいがぼやけた印象になるからです。
熟成した白ワインや高級白ワインの場合は、澱を取り除いたり香りを開かせるためにデキャンタージュを行うことがありますが、
一般的な白ワインでデキャンタージュを行うことは少ない、と言えます。
ちなみにワインの適温については、以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてみてください。
ワインを美味しく飲める温度は?種類別ワインの適温と適温にするテクニックを紹介
香りと味わいが繊細なワイン
香りと味わいが繊細なワインの場合は、白ワインだけでなく赤ワインでもデキャンタージュは逆効果になります。
例えば、ブルゴーニュのピノ・ノワールを使った赤ワインのような繊細さが魅力のワインでは、
デキャンタージュによって酸味が引き立って感じる、味わいのバランスが崩れた印象になる、といったケースも見られます。
ちなみに、香りと味わいが繊細な赤ワインとは、簡単にまとめると以下のようなものです。
- 気候が涼しい産地で造られたワイン(例:フランス北部、ドイツ)
- タンニンやポリフェノール類が豊富でないブドウ品種を使用(例:ピノ・ノワール)
- アルコール度数が高くない(目安としては12%以下)
デキャンタージュの方法
デキャンタージュの方法は、基本的にデキャンタにワインを移し替えるだけです。
ワインの香りを開かせたい場合、コツとしてはデキャンタの内側を沿わせるように、ワインを注ぎ入れることで、よりワインの香りを開かせることができます。
ただ、熟成した赤ワインの澱を取り除く時は、以下のように少し繊細な作業が必要になります。
熟成した赤ワインの澱を取り除く場合
熟成した赤ワインの澱を取り除くためにデキャンタージュする時は、ワインボトルのちょっとした振動で澱がワインの中で舞い上がってしまうので、繊細な作業が必要です。
(レストランの場合は、ソムリエやサービスマンの腕の見せ所ですが。)
デキャンタージュの手順としては、以下の通りです。
- 飲む数日前からワインを垂直に立てておく(澱をボトルの底に沈めるため)。
- 静かに抜栓してキャップシールを全て取り除く(澱が舞わないようボトルを揺らすことは禁物)。
- ワインボトルの首元に、下からライトなどの光を当てながら、傾けたデキャンタに静かに注ぐ(ライトを当てることで、注ぐ時にボトルの首元に澱が溜まってくるのが見えます)。
- これ以上ワインを注ぐとデキャンタに澱が入ってしまう直前で、デキャンタにワインを注ぐのをやめる(ワインボトルにワインが残ってしまいますが、それでOKです)。
様々なデキャンタのタイプ
デキャンタージュを行う目的の違いによって、容器であるデキャンタも主に2つのタイプがあります。
細身で縦長のタイプ
細身で縦に長いデキャンタは、ワインが空気と触れ合う面積が最小限になるため、あまり酸化を進めたくないデキャンタージュに使われます。
つまり、熟成した赤ワインの澱を取り除きたいときに使うのが、このタイプのデキャンタージュです。
ワインを入れる部分が広いタイプ
ワインを入れる部分が広いデキャンタは、空気に触れる面積が広いため、若いワインやフルボディの赤ワインの香りを開かせたい時に使われます。
デキャンタージュによってワイン全体に空気を触れさせることで、香りと味を引き立たせることができます。
まとめ
今回は、ワインのデキャンタとは何か、そしてデキャンタージュとその効果について見てきました。
「デキャンタ」は、最近では「カラフェ」とも呼ばれるワインを入れるガラス製の容器のことで、
デキャンタにワインを移し替える作業のことを「デキャンタージュ」と呼びます。
デキャンタージュを行う効果としては、ワインの味わいをまろやかにする、ワインの香りを引き出す、ワインの澱を取り除くことが期待され、
デキャンタージュに向くワインもあり、それはフルボディの赤ワイン、香りが閉じている印象のワイン、熟成した赤ワインです。
デキャンタをうまく活用して、より美味しいワインが楽しめるといいですね。
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